女性・子ども向けのカジュアルファッションブランド「ANAP(アナップ)」を運営する東証スタンダード上場のANAPホールディングスは、今年になってビットコイン(BTC)保有戦略を本格化させた。4月に初の購入を発表し、7月22日には国内上場企業として初めて、BTC建てによる第三者割当増資という前例のない資金調達に踏み切る計画だ。
なぜ、アパレル企業の一社に過ぎなかった同社が、ここまでビットコインに踏み込んでいるのか。
その背後には、今年4月に同ホールディングスの代表取締役会長に就任し、そして7月4日付で代表取締役社長に就いた川合林太郎氏と、同ホールディングス取締役副社長であり、2月に設立された連結子会社ANAPライトニングキャピタルの代表取締役社長として購入したBTCの管理運用を担う山本和弘氏の存在がある。
メタプラネットやリミックスポイントなど、国内でも非金融企業によるBTC保有が広がりを見せるなか、ANAPはどのような立ち位置を目指すのか。本業のアパレル事業とビットコインをどう結びつけようとしているのか。
CoinDesk JAPANは6月、川合氏が運営会社の代表を務める四谷の東京ビットコインベースにて両氏に単独インタビューを実施。資金調達の舞台裏から今後の事業戦略まで聞いた。
ANAPホールディングスは6月9日、ビットコインによる現物出資を含む総額223億円の第三者割当増資の実施を発表。このスキームは、国内上場企業として初の事例となる。
総額223億円のうち、普通株による調達が166億円、新株予約権による調達が57億円を占める。特に注目すべきは、普通株に対する払い込みのうち、約80億円分が投資会社キャピタルタイフーン社によるビットコインの現物出資で行われる点だ。
関連記事:国内初、ファッションブランドANAPがビットコインで資金調達──80億円分、本業領域での展開も計画か
山本氏によれば、非上場企業が同様の資金調達を行った事例は耳にしたことがあるが、非公式のため真偽はわからないという。そのうえで「上場企業としては、世界でも初となる可能性が高い」と話す。
ただ、類似する事例として、仏パリ市場に上場するザ・ブロックチェーン・グループ(The Blockchain Group、ALTBG)が5月、ビットコイン建ての転換社債を発行した事例がある。この社債の引受先は米投資企業Fulgur Venturesであり、実は同社は、川合氏が代表を務める日本法人・フルグル合同会社のグループ企業にあたる。
7月18日の臨時株主総会での承認を経て、22日に払い込みが完了する見通しだと川合氏は説明した。ビットコインを活用した資金調達の構想は今年1月頃から進めていたとし、後になって米フルグルの担当者からザ・ブロックチェーン・グループの事例を知ったと振り返った。
さらに、今回のスキームが実現した背景には複数の外的要因があったと続けた。
「米国でビットコインETF(上場投資信託)が承認されたこと、国内で私たちの事業再生ADRが昨年成立したこと、ビットコイン価格が比較的安定していたこと」があったとし、すべてが「今ならいける」というタイミングだったと述べた。
とはいえ、国内初となるスキームの実現には、金融庁や関東財務局、東京証券取引所との調整に労力を要した。中でも最大の難関は、「規制当局がビットコインをどう評価するか」という点だった。
BTC建ての資金調達は前例がないものの、規制で明確に禁止されているわけではない。しかし、評価額を算出する明確な基準がないため、税理士による第三者証明と評価機関による意見書を通じて、ビットコインの正当な価値を担保する必要があった。
〈取材場所の東京ビットコインベースには、多数のアート作品が並ぶ〉協議は2月から始まり、価格変動の激しいBTCの価値をどう確定するのかといった根本的な疑問に答えるため、開示資料の作成や説明の工夫を重ねたという。
当初、関係者からは、BTCの価格変動リスクが非常に大きいとの印象から、市場価格よりも相当保守的に低く見積もった金額を払い込みに充てる「評価額」として扱うべきではないか、との意見があった。
これに対し川合氏は、特に米国でETFが承認されて以降、直近1年の価格は比較的安定しており、「過度なディスカウントは現実と乖離している」と主張。普通株の割当先で、出資するキャピタルタイフーンにとっても過度に不利にならないよう、発行決議日から発行日までの約45日間の価格変動幅を検証した客観的データに基づいて設定したディスカウント幅を提示。最終的に、当局も受け入れたことを明かした。
今回の手法は、ビットコイン建ての証券を発行するものではなく、あくまでBTCを現物出資として、既存の有価証券の払い込みに充てるスキームだ。それでも「規制当局にその妥当性を理解してもらうまでが、最大のハードルだった」と両氏は振り返り、「ビットコインを得体の知れないものではなく、お金と同様に上場企業の株式取得に用いる手段として認めてもらえたことは大きな前進」だと川合氏は強調した。
川合氏も山本氏も、もともとファッション業界の出身ではない。両氏がANAPに関与するようになった背景には、同社がコロナ禍の影響で経営不振に陥ったことがある。
〈ANAPのホームページからキャプチャ〉若い女性を中心に支持されてきた「ギャル系」ファッションブランドとして知られる同社は、数年前から業績が低迷。創業者らが経営を担っていたが、経営再建を目的にeコマース事業を手がけるネットプライスグループがスポンサーとして支援に入った。両氏は、以前から同グループと人的関係があったことや他社での実績を買われ、再建メンバーとして招かれたという。
再建を進めるなかで同社が打ち出したのが、ビットコイン事業を中核に据えるという従来とは異なる戦略だった。BTC購入の推進、そして今回のBTC建て資金調達もその延長線上にある。
関連記事:ファッションのANAP、ビットコイン保有量200BTC超に──約2.5億円の追加投資
キャピタルタイフーン社の代表を務める宮下直也氏は、英国発の暗号資産マーケットメイカー「B2C2」(現、SBIグループ傘下)の日本法人初代代表を務めた人物で、山本氏とは10年以上前から業務上の親交があるという。両氏は過去にも暗号資産関連の事業でも協業しており、今回の出資もそうした信頼関係が背景にあった。
山本氏は、「BTCによる払い込みは、決して特殊な方法ではないことを市場に示したかった」と語り、ビットコイン現物出資により、購入の際の市場に対する影響を最小限に抑える狙いもあったと述べる。
仮に日本円で調達し、市場でビットコインを購入すれば、数十億円規模の買いが発生し、相場を乱す可能性がある。特に国内の暗号資産交換業者は流動性に限りがあり、大口取引は価格を押し上げかねない。そこで、あらかじめ保有されていたビットコインを現物出資として受け入れる形式を選択した。
川合氏と山本氏は「上場企業でもBTCで資金調達は可能」という事例を作りたかったと強調。その言葉からは、ビットコインを企業再生の切り札として本気で活用しようとする覚悟がにじみ出ていた。
ANAPホールディングスは6月、増資計画とともに8月期末までに1000BTC保有を目指すと発表。同時に、単なる保有やトレーディングにとどまらず、本業での展開にも言及しており、国内外のビットコイナーをターゲットとした高機能・高デザインのライフスタイルブランド・商品を開発し販売すると打ち出した。
川合氏によれば「1000」という数字に特別な意味はなく、投資家に対して一定の目安を示すために設定したに過ぎないという。あくまで通過点であり、達成後も保有量を拡大する可能性はある。
ただし、川合氏が繰り返し強調するのは、ビットコインを「本業とどう結びつけるか」という点だ。
企業によるビットコイン保有の先駆者となった米マイクロストラテジー(現ストラテジー)や「日本のストラテジー」とも称されるメタプラネットとの決定的な違いは、「ビットコイナー自らが、事業運営をしているか」だと述べた。両社は、ビットコインを財務戦略の一環として保有している側面が強いと川合氏は語る。
〈4月に設立された四谷の東京ビットコインベース〉ANAPは、ビットコインを思想や社会実装の手段としてとらえ、その普及を前提とした事業展開に力を入れていくと述べた。このあたりは、ビットコインの理解と普及を目的とする国際プロジェクト「Plan ₿ Network(プランBネットワーク)」の一環として四谷に設立された「東京ビットコインベース」の運営代表も務めている川合氏ならではの発言とも言える。
関連記事:「東京をビットコインの首都に」──世界2拠点目、四谷発・東京ビットコインベースが描く特区構想とは【仕掛け人・川合氏インタビュー】
「保有枚数や資産の積み上げで張り合うつもりはない」とし、ビットコインを事業の一部としてとらえ、ビットコインで何を実現するかに重きを置いていると繰り返した。
肝心のビットコイナー向けの新ブランドはすでに構想が固まっており、「名前はまだ明かせない」としながらも、11月のローンチに向けて準備を進めていると明かした。旅行や日常生活のシーンでも使える高機能・高品質なアイテムの展開を構想しているという。
ビットコインの発行上限「2100万枚」にちなむ数字や、サトシ・ナカモトのホワイトペーパーの引用など、ビットコイン文化に根ざした要素をさりげなく織り交ぜるという。一方で、いかにもビットコインという印象は避け、「ぱっと見てクール」「ビットコイナーが使っているからこそ使いたくなる」ようなスタイルを目指すと述べた。
マーケティングの観点からも、「ビットコイナーには、まだ誰も気づいていない購買力がある」と川合氏。新ブランドをきっかけに、ビットコイン保有者の周辺層やこれまで暗号資産に関心のなかった人へのリーチも狙っていくという。
〈ANAPのホームページからキャプチャ〉さらに将来的には、株主優待のBTC付与やビットコインでしか購入できない上位ラインの展開、グループ傘下のエステ事業での活用といった展望も描いている。
とはいえ現時点では、同社が中核に据えるビットコインと本業の融合ははっきりせず、おぼろげな印象は否めない。過去には2017年、原宿竹下通り店などでの「ビットコイン決済導入」を発表したものの、具体的な進展が見られなかった「前科」もある同社だけに、「今度こそ中身のないことはしたくない」と川合氏は述べた。今後の展開次第では、ANAPの再生とビットコイン事業の行方に、ますます注目が集まりそうだ。
取材の最後、川合氏に株主へのメッセージを尋ねると、「まあ、見ててください」と笑顔を見せた。ビットコインは企業再建の一手となるのか。そして、川合氏が強調した「本業との融合」がどこまで進むのか。
なお川合氏は、7月4日付で会長から社長に就任した人事について後日の取材に対し、「これまで会長・社長の二頭体制で運営してきたが、社内外から見て役割がわかりにくいという指摘があり、その解消を図った」と説明。また、同社のビットコイン事業の開始や予定されている大規模増資に向けて、「新生ANAP」を名実ともにアピールする狙いもあり、今回の体制変更に踏み切ったと答えている。
**【あわせて読みたい】**ビットコインとは
ビットコイン 購入
ビットコイン取引所
16k 人気度
3k 人気度
41k 人気度
60k 人気度
31k 人気度
94k 人気度
27k 人気度
アパレル企業ANAP、ビットコイン建て増資で再生加速──BTCは企業再建の切り札となるか?「本業との融合」に挑む新戦略【立役者・川合氏、山本氏インタビュー】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)
女性・子ども向けのカジュアルファッションブランド「ANAP(アナップ)」を運営する東証スタンダード上場のANAPホールディングスは、今年になってビットコイン(BTC)保有戦略を本格化させた。4月に初の購入を発表し、7月22日には国内上場企業として初めて、BTC建てによる第三者割当増資という前例のない資金調達に踏み切る計画だ。
なぜ、アパレル企業の一社に過ぎなかった同社が、ここまでビットコインに踏み込んでいるのか。
その背後には、今年4月に同ホールディングスの代表取締役会長に就任し、そして7月4日付で代表取締役社長に就いた川合林太郎氏と、同ホールディングス取締役副社長であり、2月に設立された連結子会社ANAPライトニングキャピタルの代表取締役社長として購入したBTCの管理運用を担う山本和弘氏の存在がある。
メタプラネットやリミックスポイントなど、国内でも非金融企業によるBTC保有が広がりを見せるなか、ANAPはどのような立ち位置を目指すのか。本業のアパレル事業とビットコインをどう結びつけようとしているのか。
CoinDesk JAPANは6月、川合氏が運営会社の代表を務める四谷の東京ビットコインベースにて両氏に単独インタビューを実施。資金調達の舞台裏から今後の事業戦略まで聞いた。
上場企業初、BTC現物出資による資金調達
ANAPホールディングスは6月9日、ビットコインによる現物出資を含む総額223億円の第三者割当増資の実施を発表。このスキームは、国内上場企業として初の事例となる。
総額223億円のうち、普通株による調達が166億円、新株予約権による調達が57億円を占める。特に注目すべきは、普通株に対する払い込みのうち、約80億円分が投資会社キャピタルタイフーン社によるビットコインの現物出資で行われる点だ。
山本氏によれば、非上場企業が同様の資金調達を行った事例は耳にしたことがあるが、非公式のため真偽はわからないという。そのうえで「上場企業としては、世界でも初となる可能性が高い」と話す。
ただ、類似する事例として、仏パリ市場に上場するザ・ブロックチェーン・グループ(The Blockchain Group、ALTBG)が5月、ビットコイン建ての転換社債を発行した事例がある。この社債の引受先は米投資企業Fulgur Venturesであり、実は同社は、川合氏が代表を務める日本法人・フルグル合同会社のグループ企業にあたる。
7月18日の臨時株主総会での承認を経て、22日に払い込みが完了する見通しだと川合氏は説明した。ビットコインを活用した資金調達の構想は今年1月頃から進めていたとし、後になって米フルグルの担当者からザ・ブロックチェーン・グループの事例を知ったと振り返った。
さらに、今回のスキームが実現した背景には複数の外的要因があったと続けた。
「米国でビットコインETF(上場投資信託)が承認されたこと、国内で私たちの事業再生ADRが昨年成立したこと、ビットコイン価格が比較的安定していたこと」があったとし、すべてが「今ならいける」というタイミングだったと述べた。
前例なきスキーム、規制当局との調整
とはいえ、国内初となるスキームの実現には、金融庁や関東財務局、東京証券取引所との調整に労力を要した。中でも最大の難関は、「規制当局がビットコインをどう評価するか」という点だった。
BTC建ての資金調達は前例がないものの、規制で明確に禁止されているわけではない。しかし、評価額を算出する明確な基準がないため、税理士による第三者証明と評価機関による意見書を通じて、ビットコインの正当な価値を担保する必要があった。
当初、関係者からは、BTCの価格変動リスクが非常に大きいとの印象から、市場価格よりも相当保守的に低く見積もった金額を払い込みに充てる「評価額」として扱うべきではないか、との意見があった。
これに対し川合氏は、特に米国でETFが承認されて以降、直近1年の価格は比較的安定しており、「過度なディスカウントは現実と乖離している」と主張。普通株の割当先で、出資するキャピタルタイフーンにとっても過度に不利にならないよう、発行決議日から発行日までの約45日間の価格変動幅を検証した客観的データに基づいて設定したディスカウント幅を提示。最終的に、当局も受け入れたことを明かした。
今回の手法は、ビットコイン建ての証券を発行するものではなく、あくまでBTCを現物出資として、既存の有価証券の払い込みに充てるスキームだ。それでも「規制当局にその妥当性を理解してもらうまでが、最大のハードルだった」と両氏は振り返り、「ビットコインを得体の知れないものではなく、お金と同様に上場企業の株式取得に用いる手段として認めてもらえたことは大きな前進」だと川合氏は強調した。
ギャル系ブランド、ANAP再建の道
川合氏も山本氏も、もともとファッション業界の出身ではない。両氏がANAPに関与するようになった背景には、同社がコロナ禍の影響で経営不振に陥ったことがある。
再建を進めるなかで同社が打ち出したのが、ビットコイン事業を中核に据えるという従来とは異なる戦略だった。BTC購入の推進、そして今回のBTC建て資金調達もその延長線上にある。
キャピタルタイフーン社の代表を務める宮下直也氏は、英国発の暗号資産マーケットメイカー「B2C2」(現、SBIグループ傘下)の日本法人初代代表を務めた人物で、山本氏とは10年以上前から業務上の親交があるという。両氏は過去にも暗号資産関連の事業でも協業しており、今回の出資もそうした信頼関係が背景にあった。
山本氏は、「BTCによる払い込みは、決して特殊な方法ではないことを市場に示したかった」と語り、ビットコイン現物出資により、購入の際の市場に対する影響を最小限に抑える狙いもあったと述べる。
仮に日本円で調達し、市場でビットコインを購入すれば、数十億円規模の買いが発生し、相場を乱す可能性がある。特に国内の暗号資産交換業者は流動性に限りがあり、大口取引は価格を押し上げかねない。そこで、あらかじめ保有されていたビットコインを現物出資として受け入れる形式を選択した。
川合氏と山本氏は「上場企業でもBTCで資金調達は可能」という事例を作りたかったと強調。その言葉からは、ビットコインを企業再生の切り札として本気で活用しようとする覚悟がにじみ出ていた。
1000BTCは目安、本業との融合が鍵
ANAPホールディングスは6月、増資計画とともに8月期末までに1000BTC保有を目指すと発表。同時に、単なる保有やトレーディングにとどまらず、本業での展開にも言及しており、国内外のビットコイナーをターゲットとした高機能・高デザインのライフスタイルブランド・商品を開発し販売すると打ち出した。
川合氏によれば「1000」という数字に特別な意味はなく、投資家に対して一定の目安を示すために設定したに過ぎないという。あくまで通過点であり、達成後も保有量を拡大する可能性はある。
ただし、川合氏が繰り返し強調するのは、ビットコインを「本業とどう結びつけるか」という点だ。
企業によるビットコイン保有の先駆者となった米マイクロストラテジー(現ストラテジー)や「日本のストラテジー」とも称されるメタプラネットとの決定的な違いは、「ビットコイナー自らが、事業運営をしているか」だと述べた。両社は、ビットコインを財務戦略の一環として保有している側面が強いと川合氏は語る。
「保有枚数や資産の積み上げで張り合うつもりはない」とし、ビットコインを事業の一部としてとらえ、ビットコインで何を実現するかに重きを置いていると繰り返した。
ビットコイナー向け新ブランド、11月立ち上げか
肝心のビットコイナー向けの新ブランドはすでに構想が固まっており、「名前はまだ明かせない」としながらも、11月のローンチに向けて準備を進めていると明かした。旅行や日常生活のシーンでも使える高機能・高品質なアイテムの展開を構想しているという。
ビットコインの発行上限「2100万枚」にちなむ数字や、サトシ・ナカモトのホワイトペーパーの引用など、ビットコイン文化に根ざした要素をさりげなく織り交ぜるという。一方で、いかにもビットコインという印象は避け、「ぱっと見てクール」「ビットコイナーが使っているからこそ使いたくなる」ようなスタイルを目指すと述べた。
マーケティングの観点からも、「ビットコイナーには、まだ誰も気づいていない購買力がある」と川合氏。新ブランドをきっかけに、ビットコイン保有者の周辺層やこれまで暗号資産に関心のなかった人へのリーチも狙っていくという。
とはいえ現時点では、同社が中核に据えるビットコインと本業の融合ははっきりせず、おぼろげな印象は否めない。過去には2017年、原宿竹下通り店などでの「ビットコイン決済導入」を発表したものの、具体的な進展が見られなかった「前科」もある同社だけに、「今度こそ中身のないことはしたくない」と川合氏は述べた。今後の展開次第では、ANAPの再生とビットコイン事業の行方に、ますます注目が集まりそうだ。
取材の最後、川合氏に株主へのメッセージを尋ねると、「まあ、見ててください」と笑顔を見せた。ビットコインは企業再建の一手となるのか。そして、川合氏が強調した「本業との融合」がどこまで進むのか。
なお川合氏は、7月4日付で会長から社長に就任した人事について後日の取材に対し、「これまで会長・社長の二頭体制で運営してきたが、社内外から見て役割がわかりにくいという指摘があり、その解消を図った」と説明。また、同社のビットコイン事業の開始や予定されている大規模増資に向けて、「新生ANAP」を名実ともにアピールする狙いもあり、今回の体制変更に踏み切ったと答えている。
**【あわせて読みたい】**ビットコインとは
ビットコイン 購入
ビットコイン取引所