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「米国株は割高でリスクが高い」という問いへの僕なりの答え | ウォール街を知るハッチの独り言 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
僕の仕事としての米国株との付き合いは、1987年に始まりました。そこから37年の間、文字通り山あり谷ありのマーケットの変動を見てきたことになります。
社会人1年目1987年の10月には、マーケットを揺るがす歴史的大事件「ブラックマンデー」が起こりました。この日ニューヨーク・ダウが一日で22%も下落したのです。
当時の僕は、ウォール街にある米系証券会社で働き始めたばかりの新人社員。暴落の余波で、周囲のアメリカ人の先輩たちが次々と業績悪化によって解雇されていく姿を目の当たりにしました。
入社わずか1年目にして、自分もこのまま職を失うのではないか――そう真剣に悩んだのを、今でも鮮明に覚えています。
その後、米国株は時間をかけて立ち直り上昇を継続しましたが、2000年代に入ると再び大きな試練が訪れます。ITバブルの崩壊です。ナスダック銘柄を中心に大きく株価は暴落したのです。その回復を待たずして今度は2008年、「リーマン・ショック(世界金融危機)」がマーケットを直撃しました。株式市場は再び奈落へと沈みました。しかし、驚くべきことにその後の米国株の回復力は目を見張るものがありました。
世界で最も早く、金融危機前の高値を更新し、そこからの上昇を続けていったのです。
その後も新型コロナ、トランプ関税などによる暴落をしたものの、その後は急激にリバウンドし、ついに先週もS&P500は史上最高値を更新しました。
そんな米国株について、「米国株のマーケットは割高であり、米国株投資はリスクだ」と言う意見を散見するようになりました。
実は、これは面白いことに、ここ十数年間で僕が日本の個人投資家のみなさんに米国株の魅力について話すたび、ほぼ必ずと言っていいほど受けるコメントでもあるのです。
ただ、事実はというと、そのような見方があり一時的に株価の下げがあったとしても、米国株は上昇を続けてきたのです。ですから、これまでのところ、もっともらしく聞こえる米国株否定論はことごとく間違ってきたのです。
アメリカの企業には、バリュエーションだけでは説明できない、日本企業と違ういくつかの際立った強みがあることを忘れてはなりません。
第一に、世界中の消費者を惹きつけるマーケティングの巧みさ。グローバル市場においてブランドを構築し、訴求力を最大化する技術は、他国の企業を大きく凌駕しています。
第二に、業績が悪化した際には、感情に流されることなく、冷静かつ迅速に人員削減や事業再編を断行できる「柔軟性(フレキシビリティ)」。これは、経営判断のスピードと質に直結する、非常に大きな構造的利点です。
第三に、「まずやってみよう」「失敗したら直せばいい」という、試行と修正を前提とした合理的で実践的な企業文化。こうした文化が、現場レベルでのイノベーションを後押しし、新たな成長機会を次々に生み出しています。
こういった米国企業の構造に気づかず、短期的な株価のバリュエーションや政治情勢に気を取られていると、気づけば市場の上昇から取り残され、機会損失をだしてしまう──僕は、そちらの方が大きなリスクだと思っています。